これは真実の物語です。
私がコーチングを学ぶなかで、出会った真実の物語をお伝えしたいと思います。
この物語を初めて聞いた時には、長男が生まれて間もないこともあって涙があふれて止まりませんでした。
コーチングは、テクニックではなく「在り方」だと心にグサッと刺さりました。
子育てをしているお母さんお父さんの皆様と共有したい内容です。
私たちは、言葉として伝える、伝えないに関わらずメッセージとして子供に影響を与えているものです。
例え、言葉として伝えたとしても心から思っていない限り子供には伝わりません。実際には、言葉がなかったとしても、子供はあるメッセージを言われたかのように受け取ります。
肯定的なメッセージがどれほど素晴らしい変化が起きるかを描いた物語になります。
是非、ご自分と重ねあわせながらお読みいただければ幸いです。
※知っている方は、今の自分がどう感じるのか?という初心に戻ってお読みください。成長しているから感じ方が違うはずです。
※子育てのワークショップでは、必ず朗読させていただいており大好評!
テディからの3通の手紙
彼女の名前はミセス・トンプソン。新年度の最初の日、受けもちになった小学5年生の生徒たちを前に、彼女は一つ嘘をついてしまった。よく他の先生もやるように、子供たち全員を見渡しながらこう言ったのだ。「先生は、あなたたちの皆のことが大好きよ。」と。でも、それはどう考えても嘘だった。なぜなら教室の最前列に、テディ・スタッダードという名の小柄な少年が、だらしない姿勢で座っていたからだ。去年からテディを見ていたトンプソン先生は気づいていた。彼が他の生徒たちと仲良く遊べないこと、汚い服を着ていること、そしていつも体がにおっていることに・・・。おまけに、テディはなんだか気に障る生徒だった。太い赤いサインペンで、テディのテストの採点をすると胸がスカッとした。解答用紙に大きなバツをつけ、一番上に大きく「やり直し」と書くのが楽しみだった。
学校から生徒の過去の記録を見るように言われたトンプソン先生は、テディの記録を最後まで見ずに放っておいた。でもとうとう彼のファイルを読み始めた途端、驚いてしまった。テディの1年生のときの担任が、こんな記録を残していたのだ。「テディはよく笑う、明るい子供だ。言われたことはきちんとやるし、行儀もよい・・・そばにいるだけで楽しくなる子供だ」
2年のときの担任は、こんなことを書いていた。「テディは優秀な生徒だし、クラスメートにも好かれている。だがお母さんが不治の病にかかってしまってから様子がおかしい。おそらく家庭生活がうまくいっていないのだろう」
3年のときの担任は、こう書いていた。「お母さんの死は、テディにとって辛すぎる出来事だった。彼自身はがんばろうとしているが、お父さんが息子にあまり関心を示さない。あの家庭生活を何とかしないと、じきにテディにも影響がでてしまうだろう」
4年のときの担任は、こう書いていた。「テディは引きこもってしまい、学校生活にほとんど興味を示さない。友だちも少なく、授業中に居眠りすることもある」
トンプソン先生は、もう問題の深刻さに気づいていた。そして自分自身を恥じる気持ちでいっぱいだった。その年のクリスマスの日、クラスの生徒たちからプレゼントをもらったときは、さらにいたたまれない気持ちになった。プレゼントのほとんどは明るい色の包装紙にくるまれ、美しいリボンがかかっている。でもテディのプレゼントだけには重苦しい茶色の紙で、不器用に包まれていたのだ。おそらく、食料雑貨店の袋で何とか形を整えたのだろう。トンプソン先生は、他の生徒たちの前で気をつかいながらそのプレゼントを開けた。案の定、何人かの生徒がくすくす笑いはじめた。中に入っていたのは、石がいくつか欠けたライトストーンのブレスレットと使いかけの香水のビンだったのだ。だがトンプソン先生はこう言った。「なんてきれいなブレスレットでしょう!」すると生徒たちの笑いはおさまった。さらに先生はブレスレットをはめ、その手首に香水をそっと押し当てたのだ。その日、テディ・スタッダードは放課後まで残り、一言こう言った。「トンプソン先生、今日はぼくのママと同じ匂いがするね。」
その日生徒が帰宅したあと、トンプソン先生は1時間以上泣き続けた。そしてまさにその日を境に、彼女はただ読み書きや算数を教えることをやめ、子供達に本当の「教育」を始めたのである。トンプソン先生は、特にテディに注意を払うようになった。共に学ぶにつれ、テディは少しずつ心を取り戻していくようだった。先生から励まされるほど、質問にすばやく答えられるようになっていった。そしてその年度末、なんとテディはクラスの中でも一番成績のよいグループに入ることができたのだ。嘘がとうとう本当になった。テディもトンプソン先生の「大好きな生徒」の仲間入りを果したのである。
1年後、トンプソン先生は自宅のドアの下に、1枚のメモが挟み込まれているのに気づいた。それはテディからのメモだった。そこにはこう書かれていた。「先生は、ぼくのこれまでの人生の中で一番すばらしい先生です。今でもそのことに変わりはありません。」
それから6年後、トンプソン先生は再びテディからのメモを見つけた。そこにはこう書かれていた。「僕はクラス3番の成績で高校を卒業することができました。先生は、僕のこれまでの人生の中で一番すばらしい先生です。今でもそのことに変わりはありません」
さらにそれから4年後、トンプソン先生はテディから1通の手紙を受け取った。そこにはこう書かれていた。「くじけそうなときもありましたが、なんとか学校に通い続け、首席で大学を卒業することになりました。先生は、僕のこれまでの人生の中で一番すばらしく大好きな先生です。今でもそのことに変わりはありません。」
そして4年が過ぎ、トンプソン先生はテディから再び手紙を受け取った。そこにはこう書かれていた。「学位取得後、さらに勉強を続けることにしました。トンプソン先生は、私のこれまでの人生の中で一番すばらしく、大好きな先生です。今でもそのことに変わりはりません」---でも今回の手紙には大きな変化があった。テディの名前に、こんな新しい肩書きがついていたのだ。「医学博士、セオドア(テディ)・スタッダードより」
物語はまだ終わりではない。そう、その年の春、先生のもとにテディから三通目の手紙が届いたのだ。そこにはこう書かれていた。「私はある女性と出会い、結婚することになりました。父も数年前に亡くなってしまったため、もしできれば先生に私の母親の席に座っていただきたいのですが」
もちろん、トンプソン先生はこの申し出を受けた。しかも、あの石がいくつか欠けたブレスレットをはめ、テディの亡き母親と同じ香水をつけて。
結婚式当日、ふたりは固く抱き合った。スタッダード博士は、トンプソン先生にこう囁いた。
「先生、僕を信じてくれてありがとう。自分は大切な存在だ、違いを生み出せる人間なんだと気づかせてくれて、本当にありがとう。」
トンプソン先生は涙を浮かべながら、こう囁き返した。
「テディ、そうじゃないわ。あなたが私に違いを生み出せる人間だと気づかせてくれたの。私はあなたに会ったからこそ、本当の教育の意味を知ることができたのよ。」
引用「ロバート・ディルツ博士のNLPコーチング P289」より
※エリザベス・シランス・バラッドが1976年に発表した「テディからの三通の手紙」です。(この作品は、1995年に日本で出版された『愛が輝く瞬間―こころのチキンスープ(2)』に収録されています)。